ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリっていう昆虫をご存知ですか?名前のとおり「白蟻(シロアリ)」の仲間で、日本でもっとも一般的なシロアリと言われています。シロアリというと、家を壊す大害虫ってイメージですが、実際には生態系には無くてはならないとっても重要な昆虫でもあるのです。また、一方ではアリの飼育をしている人間にとってはアリのエサとして認識している人も多いのでは無いでしょうか?
とはいえ世間一般的には嫌われ者のレッテルを貼られてしまったシロアリの代表格「ヤマトシロアリ」ですが、今回はそんなヤマトシロアリを詳しくまとめていきましょう!

ヤマトシロアリとは?

ヤマトシロアリはミゾガシラシロアリ科ヤマトシロアリ属のシロアリです。その中で最も生息域が北に位置し、日本で最も生息範囲の広いシロアリと言われています。

ヤマトシロアリ

生息域

北は北海道名寄市が最北の生息地であり、熱帯系の昆虫であるシロアリの中で特筆すべき耐寒性が備わっているとも言えそうです。北海道以南では本州、四国九州全域に生息し、大隅諸島、トカラ列島を最南端に日本の最普通種として枯死した樹木などの炭素循環に大きく関わっています。

また、ヤマトシロアリの中でも九州、中国四国、それ以北で更に細分化されますが、生態的な違いはほとんど無いためヤマトシロアリとして把握できていれば基本的には問題ないと言えます。

ヤマトシロアリ以外の日本のヤマトシロアリ属

カンモンシロアリ

ヤマトシロアリ以外に、ヤマトシロアリ属は複数種確認されています。その代表は「カンモンシロアリ」でしょう。カンモンシロアリは”関門海峡”に由来するシロアリで、ヤマトシロアリとの生態的な違いから古くより別種として認識されています。その生息域は非常に狭く、福岡県と山口県の関門海峡周辺に限られます。カンモンシロアリ自体は日本古来の種類ではなく南方から持ち込まれたと考えられています。
形態はヤマトシロアリに似ており、区別する最も簡単な方法は、羽アリの発生時期(カンモンシロアリは2月下旬〜、ヤマトシロアリは4月中旬〜)です。

南西諸島のヤマトシロアリ

以前はヤマトシロアリの亜種とされていた奄美群島以南のヤマトシロアリは、現在「アマミシロアリ」「ミヤタケシロアリ」「オキナワシロアリ」「ヤエヤマシロアリ」「キアシシロアリ」などとされています。北海道から大隅諸島、トカラ列島までがヤマトシロアリ。それより南が上記各種に分かれています。

そもそもシロアリについておさらいしよう

シロアリはアリでは無いってご存知でしたか?アリっていう名前だからアリでしょ!って思われるかもしれませんが、アリではありません。アリという名前がつくのは、「白い蟻」に由来するのですが、蟻のような大きさや形をしていて、生態が似ているから蟻という名前が付けられているのです。
では、「シロアリは蟻では無い」ということは、シロアリはシロアリという独自のカテゴリーの昆虫なのでしょうか。現在では、”そう”だとも”違う”とも言うことができます。

シロアリは何?

シロアリは現在の分類だと、ゴキブリ目シロアリ下目になります。シロアリはアリではなくてゴキブリに近縁の昆虫です。シロアリが朽木などをエサとする習性はキゴキブリ属に由来しており、そういったことからもゴキブリに近い生き物だということが分かります。また、シロアリは以前は等翅目(Isoptera)またはシロアリ目でありゴキブリ目から切り離されていました。

シロアリの役割

シロアリはゴキブリの仲間であり、木材など植物遺体を分解する役割を担っています。シロアリ下目の大半は、熱帯や亜熱帯の地域に生息し、硬い木材というよりも、土壌になりかけ(腐葉土のようになった表層)の土を分解する種類です。ヤマトシロアリの属するミゾガシラシロアリ科は、純粋に木材をエサとするシロアリが多く、おそらく日本人がイメージするシロアリは後者のシロアリかと思います。

ヤマトシロアリの役割

ヤマトシロアリは枯死した木材を食料として木材を分解し、炭素循環の一端を担います。その木材は、湿潤し腐朽した木材が中心で、屋外の朽木だけでなく、建築物の腐った木材も食料とすることがあります。ヤマトシロアリが樹木の構成成分であるセルロースやヘミセルロース、リグニンを分解できるのは、後腸内に原生生物が共存しているためで、これらの微生物がセルロースなどの最終的な分解を助けていると言われています。

ヤマトシロアリはどこにいる?

では、ヤマトシロアリはどのような場所に生息しているのでしょうか。地下シロアリという言葉を聞いたことはありませんか?ヤマトシロアリの属するミゾガシラシロアリ属は土中性のシロアリです。地下に巣を作る種類が多く、地下に道を作りながら移動します。この習性から地下シロアリという異名で呼ばれています。

巣の場所

ヤマトシロアリの巣は、主に朽木の中にあります。同じミゾガシラシロアリ科のイエシロアリは地中に巨大な巣を作りますが、ヤマトシロアリはそのような固定巣を作らず、エサとする枯れ木自体を巣にします。特に、土に埋もれた朽木や枯死木に多いです。
森林では、立ち枯れ木の根元、切り株によく見られます。横たわった朽木にも見られます。都市公園などでは、切り株の他、木杭などに巣がある場合があります。住宅地では庭の木材や住宅自体の木材に巣があります。

ヤマトシロアリの採集

採集するには、上記の巣を探すことが必要です。自然豊かでなくても、枯れ木や木材が地面に放置されている場所であれば意外と普通にコロニーを見つけることができるはずです。一番欲しいのは、女王アリと王アリですが、ヤマトシロアリの創設女王や王を発見するのは至難の技なので、とりあえず職蟻と兵蟻を100匹単位で採集することを第一目標に探してみましょう!

羽アリ採集という方法も

ヤマトシロアリの羽アリ
4月下旬から5月ごろはシロアリもアリ同様に羽アリを飛ばします。ヤマトシロアリの羽アリが飛び立つことを群飛といい、一度にアリとは次元が違う量の羽アリを外に飛ばします。屋外でもたじろぐほどの群飛ですが、これが家の中で発生したら天井一面が黒く覆い尽くされるほどになります。あまりに大量なので、群飛のタイミングに遭遇すれば採集の大チャンスです。

ヤマトシロアリの羽アリ採集

アリと違い、シロアリはぱっと見てオスとメスの判断がつきません。そして、生殖方法も違います。ということでどうやって羽アリを採集すべきかを簡単にご説明します。

ヤマトシロアリの追尾
羽アリは外に飛び出し、地面に降り立つと羽を自ら切り落とします。その時、オスとメス(2匹)が2列に連なる行動をし、地面を2匹で行動しながら朽木など巣に適した場所を探します。その2匹のつがいが意外と簡単に見つかります。要はこの2匹を採集すれば新しいコロニーを創設させる王と女王である可能性が高いということです。

シロアリの生殖方法
女王と王はつがいとなりコロニーを共同で作ります。アリと大きく違うのは、王がいるかいないかです。アリの場合、結婚飛行時に交尾して女王は一生分の精子を腹部に溜め込みます。そのためアリは女王のみでコロニーを作り上げることができます。シロアリは女王が精子を貯め込むことができないため王と女王がコロニーには必要です。※ヤマトシロアリは単為生殖をすることがあることも知られています。

ヤマトシロアリの飼育

シロアリの飼育は簡単です。ですが、長期飼育は意外と難しいかもしれません。
必要なものは、タッパーなどのケース殺菌した木質マット(または、キムタオルなどの木質タオル)と霧吹きです。

シロアリの生育環境は湿った朽木なので、タッパーに木質マットやキムタオルを敷き、霧吹きで適当に湿らせます。そこにヤマトシロアリを投入して飼育することが可能です。シロアリは乾燥にとっても弱いので、タッパーの蓋は必ずしておきます。また、通風がなさすぎると、タッパー内にカビが発生しやすく危険です。なのでタッパーの蓋に小さな穴を複数箇所開けておくと良いですね。ちなみに、木質マットの代わりにティッシュもオススメです。ティッシュはシロアリの食いつきが非常によく、コロニーが安定しやすいです。ただし、カビが生えやすいので管理に注意が必要です。

うまく安定すれば、副生殖虫が誕生して卵や幼虫を見られるようになるかもしれません。1年くらいはコロニーをきれいに維持することができますが、長期飼育となるとちょっと厄介な問題が発生することもあります。

 ヤマトシロアリ自体にダニが寄生していることが多いのですが、飼育ケース内にダニが増殖してシロアリが全滅することがあります。ダニが発生したことでシロアリが弱ったのか、コロニーが弱くなってきたことでダニが増えたのか、実際に何が原因なのかは不明ですが、ダニがいると長持ちしません。また、コロニーの勢力が弱まると共存しているトビムシが増殖することもよく見られます。

ダニが増殖するとコロニーの存続は厳しくなるので、安定した環境を飼育容器内に用意するのは難しいのかも知れません。

新女王からの飼育

実はかなり難しいのが新女王からの飼育です。羽アリシーズンであれば新女王と王のペアを採集することは簡単ですが、そこからコロニーを作るのは非常に難しいと言われています。私も何度も試していますが、殆どが失敗に終わるほどです。産卵しても卵を食べてしまったり、幼虫が誕生しても規模が大きくならなかったり、最終的にはコロニーが完成する前に死滅してしまいます。ヤマトシロアリよりもイエシロアリのほうが成功しやすいですが、イエシロアリの場合も自然界のように立派な巣を作ったり、女王の腹部が大きく成長することはほとんどありません。

新女王からコロニーを作るには

  1. 試験管とキムタオル(茶色)を用意し、試験管にキムタオルをギュウギュウに詰め込みます。
  2. 2cmから5cmくらい詰め込めば大丈夫です。
  3. そして、水を注入して詰め込んだキムタオルを湿らせます。
  4. ここに、ペアのヤマトシロアリを投入します。
  5. 投入後は、再度キムタオルを試験管に詰めてペアがギリギリ移動できるくらいの空間を作ります。
  6. 上側のキムタオルは湿らせる必要はありません。
  7. 試験管に栓をします。(栓は密閉する素材なら小さな穴を開けます。)
  8. (僕は普段は綿栓を作って栓をします)

この方法なら、卵〜幼虫までは上手く行きやすいです。シロアリの羽アリは個体差が結構あるので、しっかり管理してても産卵しなかったり、すぐに死んでしまうことがあります。できれば複数セット作って成功確率を上げてみましょう!

ヤマトシロアリは餌になる?

ヤマトシロアリはアリのエサになる
僕はアリを飼育しているので、ヤマトシロアリをアリのエサとして飼育することがあります。アリなどの肉食昆虫にはシロアリは小さく扱いやすいことと、柔らかいことからもエサとして与えやすいです。昆虫以外では、爬虫類などのエサにも使われます。エサとするのであれば飼育管理するのもいいですが、長期飼育が難しいことを考えるとシロアリの生息場所をいくつか探しておいて、都度採集してくる方法の方が実は効率が良かったりします。

最後に、ヤマトシロアリの人への害について

多くの人の関心は、飼育や生態についてではなくて、シロアリの害についてだと思います。ここでは若干項目違いではありますが、一応簡単に触れておきます。
ヤマトシロアリは日本のほぼ全国に生息するシロアリですから、人への被害も日本のシロアリの中でダントツです。人への被害と言っても、人間に直接害があるわけではありません。人の住む建物の木材自体を食い荒らしてしまうため、人の生活に害を及ぼすという意味です。
あくまで、人間の生活に入り込んでしまったときにいわゆる”害虫”となってしまうのです。

冒頭にも書きましたが、シロアリからしてみれば死んだ樹木を分解して物質循環をすすめているに過ぎませんし、シロアリの生息地に家を建てたのは人間です。地球全体で見てみれば、シロアリは極めて重要な生物ですし、人間の生活に害があるからと言って、簡単に「害虫だ!」「駆除しろ!」と言ってしまうのは、ちょっと違いますよね。でも、人間の生活を脅かす(特にシロアリの被害がある状態での大震災など)のも事実ですから、人間目線でコトを考える必要があるのも事実です。

僕は正直、シロアリと人間は共存できると思っています。「シロアリ=益虫」という考えが社会全体に浸透していれば、家にシロアリが侵入しないようにするにはどうするか?を考えると思います。現在では、シロアリに家を食べられてしまうと”危険だから”という意味合いで予防対策をしているみたいですが、あくまで”殺虫”ですからね。あと、政治家が「シロアリ」って言葉を悪い意味で使うのはどうなんでしょうね。

まとめ

ヤマトシロアリについて、いろいろな視点でまとめてみましたがいかがでしたか?僕は結構好きな生き物で、その生態の面白さも良さの一つですが、やっぱり観察しているとすごく可愛く見えてくるところがすごく好きなポイントですね!普段は枯れ木の中や土の中で生活してるため、なかなか見ることは無いと思いますが、案外どこにでもいるのがこのヤマトシロアリです。観察対象にしても、エサとしても、人間との関わりを考えるにしても、結構話が尽きないタイプの昆虫なので、ぜひ皆さんもヤマトシロアリという昆虫に興味を持っていただければと思います!

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