山地に広く生息するヤマヨツボシオオアリ。飼育例は多くありませんが、比較的簡単に採集できるアリです。ここでは、ヤマヨツボシオオアリを実際に採集し、飼育する方法をご紹介します!
目次
ヤマヨツボシオオアリとは?
ヤマアリ亜科オオアリ属のアリで、本州から九州にかけて広く分布します。山という名前の通り山地(内陸)に多く、生息地では普通に見ることができるでしょう。
体長は4mm前後で全体的に黒い見た目をしています。よく観察すると前胸部は赤から橙色で美しいアリです。コロニーにより若干の色の違いがあります。また、ヨツボシの名前の通り腹部に4つの円紋があり非常に特徴的です。
また、メジャーワーカーもコロニー内に比較的多く、大きな頭部で区別ができます。写真上がメジャーワーカーです。下に写っているのが女王アリ。実は女王アリのほうがスマートな見た目をしています。女王アリを見分けるポイントは胸部の大きさと脱翅痕です。
ヤマヨツボシオオアリのコロニー。女王が複数いるのがわかりますか?実は多女王性で、女王が数匹集まってコロニーを形成します。
例えば、ナワヨツボシオオアリやヨツボシオオアリ、シベリアカタアリはヤマヨツボシオオアリと同じように4つの円紋を持ちます。そのため、腹部の四つ星で種類を判断することはできません。
ヤマヨツボシオオアリの採集
それでは、ヤマヨツボシオオアリの採集方法をご説明します!
ヤマヨツボシオオアリの営巣場所は「枯れ枝」
アリは一般的に土の中や樹木の根本に巣を作ると思われがちですが、ヤマヨツボシオオアリは違います。樹木の枯れ枝や枯れ落ちた枝に営巣します。
枯れ枝と言っても、色々な種類、大きさ、形がありますよね。
あくまで私の印象ですが、ヤマヨツボシオオアリを採集するときどんな枝を狙うべきかの基準をまとめてみました!
枝の状態
- 乾燥している
- 粘りがなくポキッと折れる
- 持ったときの重さが想像よりやや軽め
- 劣化しすぎていない
- 腐朽菌が回っていない
枝の太さや形
- 直径10mmから25mmくらい
- 枝の中が空洞になっている
- 比較的シンプルな枝(ゴツゴツしていない)
このような枝にヤマヨツボシオオアリが住み着いていることが多いです。
参考:生息地の環境条件など
この条件は私がヤマヨツボシオオアリを採集したときにたまたま一致していた条件となります。
※他の場所では当てはまらない可能性があります。
- 日当たりは普通〜良好
- 湿地よりも水はけがいい斜面や尾根
- 標高200〜500m(東京都、埼玉県)
採集の方法
ヤマヨツボシオオアリの採集は基本的にアリが活動していない冬がおすすめです。冬眠中であればコロニーが枝の中に固まって入っており採集が容易ですからね!
道具は?
冬の採集に必要なのは、「手袋」「タッパー」「小分けの容器」の3つです。これがあれば問題ありません。他にも、吸虫管などもありますが、正直お好みです。詳しくは冬の採集記事をご覧ください。
枝を探す
ヤマヨツボシオオアリが巣を作っていそうな枝を探します。枯れ枝と言っても、基本的に折れて地面に落ちている枝を探す必要があります。
間違っても生きている樹木の枝を折ったり割ったりしないようにしましょう。
中が空洞になっている枝を見つけたら、それを折ってみます。枝を折るだけだから作業自体は簡単です。
しかし、はじめの頃はどんな枝に巣があるかが見ても全然わからないかもしれません。こればかりは場数を踏むしか方法はありません。
実際に探してみた
こんな感じの枝は普通に落ちているので、それっぽいものを拾いましょう。先述しましたが、最初はどれを拾うべきか全く分からないと思いますが、確実な答えはありません。何度もトライしていく過程で、それっぽい枝か駄目な枝かの判断ができるようになってくるはずです。
それっぽい枝があったので拾って確認してみます。
中はやはり空洞になっていて、アリが営巣していました。ヤマヨツボシオオアリで間違いなさそうです。
また、今回はトゲトゲの枝からもヤマヨツボシオオアリを採集することができました。こちらのコロニーをお持ち帰りして、今シーズン飼育してみようと思います!
ヤマヨツボシオオアリを飼育する
では、採集したコロニーを使いヤマヨツボシオオアリの飼育方法をご紹介します。写真のとおり、細長い遠沈管にヤマヨツボシオオアリがコロニーごと入っています。
枝から振り落とします。冬場に採集したためアリたちは冬眠状態です。枝を軽く叩けば簡単にコロニーごと落ちてきます。もしも活性が高い場合は、寒い場所に置いておくか冷蔵庫に数分だけ入れて動きを鈍らせてみましょう。
飼育ケースはどれが良い?
ヤマヨツボシオオアリの飼育は乾燥が大切です。そのため巣内が高湿度にならない巣を使いましょう!たとえば、下記がその代表例です。
- 木製の巣(丸太巣)
- 試験管巣
- アクリル巣
- 石膏巣(乾燥状態)
- プラスチック巣
個人的には、やはり自然の状態に一番近い「丸太巣」がおすすめ。それ以外の巣でも高湿度に意図的にしなければ問題はありません。
引っ越しさせる
今回は、プラスチック巣が余っていましたのでこれを使います!プラスチック巣は3Dプリンタで作成されることが多く、この巣も洞窟の形状を模した3Dプリンタ巣と思われます。
巣の中はこのようになっています。左右に綿が入っており、そこに水分を溜めて湿度を調整するようです。ヤマヨツボシオオアリは乾燥状態で問題ないですが、念の為左側の綿を軽く湿らせておきました。
あとは、ヤマヨツボシオオアリを放してあるタッパーにケースを入れておけば勝手に引っ越してくれます。今回も一晩で引っ越してくれました!!
ヤマヨツボシオオアリのエサは?
飼育に必要なのはエサと水分です。だからといって何か特別なものを用意する必要はありません。基本的に、蜜エサ(メープルシロップ、プロゼリーなど)と肉エサ(プロテインパウダー、シロアリ、レッドローチ、ミルワームなど)があれば問題ないでしょう。
アリのエサについて詳しくはこちら↓
飼育環境は?
ヤマヨツボシオオアリは冬も比較的寒くなる地域にも分布します。しかも、特に”冷えやすい”地表面付近の枯れ枝に身を潜めているため、耐寒性はそれなりにあるはずです。その分、夏の暑さには十分注意しましょう。5℃から30℃の間なら問題ないと思われます。私の飼育環境は、夏場:25〜30℃、冬場:12〜20℃くらいです。
まとめ
ヤマヨツボシオオアリは山地に行けば比較的簡単に見ることができるアリです。採集難易度も、飼育難易度も高くありません。この記事を参考にヤマヨツボシオオアリに興味を持っていただけたら、ご自身でも飼育してみてはいかがでしょうか。
ちなみにヤマヨツボシオオアリに限らず、平野部〜温暖な山地に多い「ウメマツオオアリ」や「イトウオオアリ」、温暖な海沿いに多い「ナワヨツボシオオアリ」も同じような特徴を持っています。採集や飼育もほとんど同じなので、ヤマヨツボシオオアリがあまり生息していなくても、その土地のアリを見つける事自体が楽しいはずですので、ぜひチャレンジしてみてください。