ハキリアリが日本で見られる!アリ飼育観察スポット「多摩動物公園」

ハキリアリを見てみたい!と思っても、そう簡単に見られるものではないからな〜と思っていませんか?
でも、実はハキリアリを日本で見る方法があるのです。今回は日本で唯一ハキリアリを見られる場所、「多摩動物公園のハキリアリ」のご紹介と、ハキリアリについても簡単にご説明していきます!

ハキリアリってどんなアリなの?

ハキリアリは中南米の熱帯雨林を中心に広く分布するアリの一種です。日本には生息しておらず、海外種としてテレビの特集でも度々見かけることのある華のあるアリですね。
ちなみに、ハキリアリはハキリアリ属などに含まれるアリの総称で、英語ではLeaf cutting antと呼ばれているそうです。

葉を切り落とすアリ

ハキリアリに切り落とされた樹木
名前のとおり、葉を切り落として巣に運ぶという特殊な生態をもっており、他のアリとは異なる特徴を持ちます。
ではなぜ葉を切って巣に持ち帰るのか知っていますか?それは、巣内で農業をするためなのです。なんと”農業をするアリ”がハキリアリの正体。世界には凄いアリがいるものですね〜。

ハキリアリは菌を育てる

ハキリアリは地中の巣内に持ち込んだ葉っぱの切れ端に、「アリタケ」と呼ばれる菌類を植え付けます。そして、葉を養分に菌糸を成長させたアリタケを、十分に成長したのちに収穫するのです。まさに人間の農業そのものが地中で行われている…。ちょっと信じられません。でも、事実なんだから驚きです。

アリタケをどのように活用しているの?

では、ハキリアリたちはアリタケをどのように活用しているのでしょうか。それは、自分たちの食料にしているのだとか。幼虫や女王アリは働きアリたちからアリタケを分け与えられ、その栄養だけで成長します。きっとものすごい栄養食なんでしょうね。

ちなみに、日本にも負けていない昆虫がいます。

ハキリアリのように農業をするアリがいるなんて驚きですが、実は日本にも似たように農業をする昆虫がいます。それが沖縄に生息するタイワンシロアリです。
タイワンシロアリは、土中に菌園をつくりそこでキノコを栽培するキノコシロアリの一種で、菌糸により分解が進んだ植物質をエサとします。ハキリアリと異なり、葉っぱを切り落とすことはしませんが、植物遺体を活用して菌糸を植え付ける方法で農業を営んでいます。

ちなみに、タイワンシロアリの巣から発生するキノコ「オオシロアリタケ」は食用になるキノコ。食べたら美味しいと聞きますがどうなんでしょうね。気になります!

ハキリアリは日本では飼育できない

日本で飼育できる海外産のアリは沢山いますが、ハキリアリは飼育が禁止されています。というのも、植物防疫法の規制を受けているためで、原則として輸入ができないのです。
「ハキリアリを飼育したい!」と思われた方もいるかもしれませんが、日本に入ってくることがまずありませんので飼育することは不可能と言えそうです。

また、生息域では重要な農業害虫と認識されています。生きた葉っぱをごっそり刈り取られてしまう訳ですから、農業への影響は深刻なものとなってしまうのでしょう。もしも日本でハキリアリが定着したら…それは大変なことになってしまいます。そういったことからも、日本では”飼育”ではなく”観察”で我慢しましょう!

多摩動物公園でハキリアリが公開されているので行ってみた

多摩動物公園
そう、日本では現在、多摩動物公園でハキリアリが飼育展示されています。個人的に飼育することは出来ないけど、ハキリアリの生きた姿は見ることができるのです!
葉っぱを刈り取る働きアリの姿や運搬する姿がそのまま展示されています。しかも、ちゃんと女王アリがいるコロニーとして長期的に飼育されているというから驚きです。

実は、ちょっと前に多摩動物公園に行く機会があったので、ついでにハキリアリを見てきました!というか、ハキリアリが目的なんですけどね。

私が訪れたのは、新型コロナの前だったので開園日なら普通に見ることができました。
2020年8月現在は、ハキリアリ展示スペースは開園日の平日のみ公開されているようです。

展示されているのは「昆虫園本館」

昆虫館本館
こちらが昆虫館本館。立派な建物です。「昆虫館本館」の名前とともに「とんぼ昆虫館」の名前が。これはどっちが正式なのだろう?

昆虫館前
昆虫館前の広場には大きなバッタさんのオブジェが。奥に見えるのは本館の反対側にある昆虫生態園。こちらにはハキリアリはいませんのでご注意。

昆虫館本館2階のクロヤマアリ
昆虫館本館に入り2階に進みます。すると、まず目を奪われるのがクロヤマアリの大型模型。かなり精巧ですが、ツヤツヤなのでツヤクロヤマアリかな?

ミルワーム
そして、昆虫展示が始まります。なぜか展示されているミルワームたち。

展示スペース
他にもトビズムカデやゴキブリなどマニアックな子たちを中心に展示されていましたよ。私はハキリアリ以外に興味が無かったのでほとんど写真を取り忘れてしまいましたが…!

ハキリアリの展示
そしてこちらがハキリアリの展示スペース!横幅3〜5mくらいのガラス張りの展示になっています。昆虫館の中でも最奥部に位置しているため結構薄暗い場所に鎮座していました。

ハキリアリに切られた葉
飼育ケースには葉っぱを置くためのいわゆるエサ場が右側に設置されています。当日見に行ったときににはほぼ切られ尽くされた木の枝が1本残されている状態でした。これ、毎日交換されているみたいだから凄い食欲ですよね。

上の写真の左側には葉っぱが刺さっていないですよね。これ、実は新しい葉っぱを交換する前なんです。

実は、多摩動物公園の定例イベント「ぱくぱくタイム」にハキリアリも入っているのです!!他の動物はコアラとペリカンだから、ハキリアリもなかなか人気なのかな?

ちなみに、ハキリアリのぱくぱくタイムは11:30。実はその時間に合わせて観察することができました。

ハキリアリのぱくぱくタイム
これがハキリアリのぱくぱくタイム…。11:30に合わせて裏側の扉がおもむろに開き、飼育員のおねえさんが新しい葉っぱを設置して終了!わずか30秒足らずのレアイベントでした。

凄くシンプル。まあ、飼育員さんがハキリアリに葉っぱを手渡しする訳もないですし、そりゃ当たり前なんですけどね。とりあえず、新しい葉っぱが来たのでハキリアリたちを観察してみましょう。

ハキリアリ
面白いのは、ハキリアリたちが巣に運びやすいように太めの縄で道を作っているところです。この縄を行き来するハキリアリたちがとっても可愛い。

ハキリアリの展示
巣となる水槽は、合計5個設置されていました。中央の水槽以外はスカスカなので小規模に見えますが、実際には相当数の働きアリや兵アリたちが巣内やエサ場、ゴミ捨て場などで活動しています。自然界のハキリアリに比べると小さなコロニーなのでしょうが、普段からアリを飼育している私からすると非常に大きなコロニーって感じで見ることができましたよ。

ハキリアリの巣
そして、あることに気づいたのですが、この日アリ撮影用のマクロカメラを持ってき忘れました…。なのでハキリアリたちの大きな写真を撮ることができず。めちゃくちゃ悔やまれますが、アリ単体の写真は次回の宿題ということで。

上の写真を見ると、エサ場の底に切り取られた葉っぱが散乱しているのが見えますよね。これ、ハキリアリが運搬途中で落としてしまった葉っぱたちです。観察していると意外と落としてしまうことが多いのか、落ちた葉を回収する姿を頻繁に観察することができました。

ハキリアリの巣
こちらが展示で一番大きなハキリアリの巣。網目状になっており、巣の内部に葉が溜め込まれているのと、白っぽい菌糸のようなものが見えますよね。これがまさにハキリアリが農業をしている姿です。この巣を観察出来ただけで十分満足っす。巣内にはビッシリと働きアリたちが活動しています。

ハキリアリの標本
ハキリアリを撮影出来なかったのですが、標本も一緒に展示されていたのでこちらを見てみましょう。ハキリアリの働きアリは大きく分けると小型の働きアリ、中型の働きアリ、大型の働きアリ(兵アリ)に分けられます。でも、この標本からも分かるように働きアリの大きさは変化に富んでいるのが分かりますよね。実際、飼育展示されているハキリアリはバリエーション豊かな働きアリたちがせっせと働いていました。

と、こんな感じで観察していましたが、意外とハキリアリを見に来る方が多く、さすがに長時間の観察はできません。なので、一旦多摩動物園を散策してから、帰り際にもう一度立ち寄ってみることにしました。

数時間後…

丸坊主になった葉っぱ
え、、あんなにあった新しい葉っぱが丸坊主になってる。ハキリアリの仕事っぷりは想像を超えてくるレベルだったようです…!

このコロニー規模でこの仕事量ってことは、本当に現地の農業を営む方々からすると”最悪の害虫”と言われるのは納得かも。下手したら数日で木まるごと1本葉っぱが無くなるんじゃない?って思っちゃいますがどうなんでしょうね。

ちなみに、ハキリアリの生態系での役割も簡単にご紹介しておくと、葉っぱを食べ尽くすことは意外にも、熱帯雨林を豊かなものにするために重要とも言われています。林業で言うところの間引き、枝打ちに相当するのかもしれませんね。また、分解されたゴミは栄養豊富な土壌となり、豊かな森にする役割を担っているそうですよ。

ハキリアリ
縄の上を葉っぱを咥えながら歩くハキリアリ。やはりこの姿が一番カワイイ!

飼育容器
アリの飼育者的にどうしても気になるハキリアリ飼育ケースの構造。とても太いパイプに縄を通す構造になっています。湿度などの管理はどうしているのでしょう。気になります。

ハキリアリの巣
飼育ケース内にも縄が伸ばされており、ゴミ捨て場までつながっています。
ハキリアリたちは休むことなくずっと葉っぱを切り、巣に持ち帰り、葉を細かくして菌園に葉を入れて菌を育てる、という農業を続けていました。

これを人間が誕生するはるか昔から途切れることなくやってきた、と考えると頭が下がりますね。
ハキリアリはやっぱすごい。実際に見て観察すると、その凄さや魅力に惹かれてしまいます。

ハキリアリを見るなら多摩動物公園

と、こんな感じでハキリアリについて、そして多摩動物公園のハキリアリ飼育展示についてご紹介させていただきました。
日本でハキリアリを生で見ようとすると、ここくらいしかありませんので、「ハキリアリを見たい!」というあなた、ぜひ一度多摩動物公園に訪れてみてはいかがですか?

おすすめは11:30分のぱくぱくタイムに合わせて観察し、帰り際にもう一度観察する、という流れです。葉っぱがキレイに切り取られて無くなった姿をみると、ハキリアリ凄い!と絶対になります。めっちゃおすすめですよ。

多摩動物公園公式サイト

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