アリなどの小さな昆虫を採集する方法は様々です。
「飼育するために採集する」「どんなアリがいるか調べるために採集する」などなど、目的によってその方法も変わってきます。
今回はそんな採集方法の中で、小さなアリを採集する最もポピュラーな方法「ふるい(篩)を使った採集方法」をご紹介します!
目次
ふるい採集「シフティング」
カドフシアリやウロコアリ、ハリアリなど土中やリター層に生息する小型のアリを採集する場合、手で採集するのは困難です。
そんなとき、ふるいを使ってアリ採集します。
ふるいとは、「土ふるい」や「ザル」などのことで、リターや土壌をふるいにかけて隙間に潜むアリたちを落として見つけやすくすることができるのです。
研究者なども実際に行う方法で、「シフティング」とも呼ばれます。
ふるい採集の目的
ふるい採集の目的は、飼育するためにアリを採集するのではなく、どちらかというと、「何が生息しているか」を調査する意味合いが強い方法です。
理由は2つあります。
一つが、コロニーごと採集できる可能性が低い、という点です。
当たり前ですが、ふるいにかける際に採取したリターや土壌は少なからずシャッフルされます。そういった状況でアリが一箇所に固まって採集できるものでは無いですよね。
ワーカーが一個体だけ見つかることもあれば、女王アリだけ見つかるときもあります。
もちろん、運良く数十頭のワーカーや女王アリが見つかる場合もありますが、その確率は高くありません。
そして、2つ目が、飼育に向かないアリが多いからです。
シフティングで採集するアリは、超小型のアリが多く2mm前後のものがほとんどです。
そして、癖のあるアリが多いこと多いこと。
例えば、ウロコアリ、カドフシアリ、ノコギリハリアリ・・・。
どれもクセ強めですよね。
なので、「飼育は望まないけど、あのアリを一度は見てみたい!」という場合や、「この地域にはどんなアリがいるのか調べてみたい!」というとき、または「敷地内のアリの種類を確認したい」という場合に、シフティング(ふるい採集)が向いています。
準備するもの
ふるい採集に必要なものは、極めてシンプルです。
絶対に必要な道具
あると便利な道具
▼吸虫管の自作方法はこちらでもご紹介中です!
私が使っているもの
全く参考になりませんが、私が普段使っているものもご紹介します。(ダイソーで合計220円で購入した道具です(汗))
むしろ、これは参考にせず、「こんな道具でもふるい採集できるんだ・・・」と思っていただけると助かります!
ふるいはダイソーで購入した粗目の土ふるいです。かなり粗いので石や砂粒なども通過してしまいます。私の先輩は2mmメッシュくらいのものを使っていますので、そちらを参考にしてみてくださいね。
バットは、こちらもダイソーで購入したタッパーを使っています。半透明ですが一応使えます。
バットのオススメは白くてふるいよりも幅広のものですね。こちらは100均でもトレーとして売られていると思います。
また、携行品として私はデジカメと手袋、小さなカップだけ持ち歩いています。
デジカメはTG-5をルーペ代わりとして、手袋は怪我防止、小さなカップは自宅での同定のためアリを持ち帰る際に必要ですね。
実際にアリ採集をやってみた!
ということで、ここからは実践編。
ちょっと前に、先輩とふるい採集に行ってきましたので、その様子を御覧ください!
ふるい採集の方法
とその前に、簡単にふるい採集のやり方をご説明しておきます。
と言っても、非常に簡単♪
- ふるいにリターを載せる
- バットの下でふるいを揺する
- バットに落ちたアリを探す
これだけです。
ただし、一応ポイントもあります。
- 乾燥したリターではなく、湿り気のあるリターやフカフカな土壌をふるいに掛ける
- 斜面で土壌が頻繁に動く場所でなく、平面で落ち葉が堆積しやすい場所を選ぶ
- 樹木の根元などは特に見つけやすい
こういった点を覚えておくだけで、アリがヒットする確率が高くなり、篩い採集が楽しいものになりますよ〜!!
ちなみに、もっと詳細に調べる場合、ツルグレン装置(熱で土壌生物だけを抽出する装置)を使います。今回は、詳細に調べる訳ではないので省きますが、もっともっと深い世界があることも知っておきましょう♪
ふるい採集どんなアリが見つかった?
ふるい採集に来たのはとある林。あまり土壌が撹乱されていない場所です。
この場所で小一時間ふるい採集してみました!
※知識不足により種を断定しておりませんが、間違い等あればご教示いただけると幸いです。
果たしてどんなアリさんが見つかったでしょう?
ではまず、ひとふるい・・・。
最初に見つかったのは、黒くてゴツゴツしたアリさん。
早速手持ちのTG-5で撮影してみます。これは篩いでよく出てくるカドフシアリでしょうかね。リター層にいるアリなので普段は見かけませんが、豊かな自然が残っている場所であれば結構な確率で見つかります。
このように、結構な頻度で見つかります。
私は見つけられませんでしたが、同行の先輩はカドフシアリ女王を多数見つけてました・・・!羨ましい・・・。
続いて2回目。
お!次は小さなハリアリが見つかりました!これはニセハリアリ属のようですね〜。
さらに、もう一種類は女王アリが出てきました。
こちらは大きく4mmくらいです。テラニシハリアリの女王でしょうかね。
続いて、もう一種いました!
こちらは、おなじみのトゲズネハリアリのワーカーのようです。
そして、ハリアリがどんどん出てくる・・・・
こちらはヒメハリアリの女王でしょう。テラニシハリアリに似ていますが、より小さいのと、腹柄節も違うので見分けやすいですね。
またまたハリアリ。
こちらはオオハリアリ属のアリでしょう。場所的にナカスジハリアリかと思いましたが、帰宅後に腹柄節の形状を後ろから見ると、オオハリアリのようでした。
場所を変えて篩い採集を継続します。
いつも見かけるアリが出てきましたキイロシリアゲアリですね。
このアリを見かけるとなんかホッとします。可愛いですしね。
同じ場所でキイロシリアゲアリよりたくさん見つかったのが、こちらのムネボソアリ属。
写真の個体は女王アリですが、本当にたくさん見つかりました。ヒメムネボソアリかなと思います。
こちらはアメイロアリ。コロニーで見つかりました。
アメイロアリも非常に多いです。今回のふるい採集で最多かな?
そして、個人的に初めて見るアリさんも。
今まで見たことのなかったウロコアリの一種を見ることができました〜。
イガウロコアリの女王アリでしょうか。
旧アゴウロコアリ属のアリをこの目で初めて見たので地味に嬉しい。
一眼で撮影してみました。私の機材だとこれが限界です・・・。
日本産アリ類図鑑で調べたところ、やはりイガウロコアリと特徴が一致しました。
と、こんな感じでふるい採集をやってみたところ、短時間でもたくさんの種類のアリを発見することができました!
やはり小さなアリが多いですが、普段見かける種類のアリではないので見つかる度にテンションがあがります♪
あ、それから篩い以外でもいくつかTG-5で写真を撮ったので、折角ですからご紹介します。
まずはアメイロアリのコロニー。
このコロニーは石の下に巣がありました。女王アリをばっちり収めることができて満足。でも、一眼で撮影したかったシチュエーションですね。
こちらはウロコアリの仲間。同じく石の下に営巣してました。
トゲアリも活動していましたよ〜。
まとめ
今回はアリなどの小昆虫を採集する方法「ふるい採集(シフティング)」を実際にやってみました!
メジャーな採集方法なので、「こんなの知っているよ〜」という方も多いと思いますが、逆に「やったことなかった!」だったり「近くの森のアリの種類を調べてみたい!」と思われた方も多いと思います。
決して”飼育するための採集”ではありませんが、私たちの身近なところにもアリはたくさんの種類が生息していることに気づけるかもしれません。
純粋にアリが好きで、いろいろなアリを見て種類の違いを学びたい、という皆さんにはぜひやって欲しい調査方法です。
私もいろんな地域のリターをふるい採集してみたくなっちゃいました。
ふるい採集から、もしかすると新しい発見が見つかるかもしれませんよ〜。レッツトライ!