トビイロケアリなどのケアリに一時的社会寄生するアリ、アメイロケアリ。
新女王から飼育する場合は、人工的にトビイロケアリなどのケアリに寄生させる必要があります。今回はアメイロケアリの飼育について、私の経験談を元に解説していきます!
目次
アメイロケアリとは?
ケアリの一種のアメイロケアリは、ケアリ属アメイロケアリ亜属のアリです。アメイロの名前の通り体色が飴色(黄色)をしているのが特徴です。トビイロケアリなどのケアリとも形は似ていますが、体色に大きな違いがありますね。
女王蟻の体色は黒〜茶褐色でツヤがありキレイな見た目をしています。また、トビイロケアリなどの女王と比較すると、腹部は小さく俊敏な動きをします。
体長は、働きアリは4mm〜4.5mm、女王アリは7、8mmほどの大きさです。
生息環境
主に、地中や木の根元に巣を構築する地中性のアリで、東京では結婚飛行を行う6月から7月と秋(10月ごろ)に地上を徘徊する姿をよく見ることができます。
都会でもトビイロケアリなどが生息する場所には普通に見られ、一般的なアリです。
似た種類にヒゲナガアメイロケアリも
また、似た種類にヒゲナガアメイロケアリというアリがいます。
こちらもアメイロケアリと形や生態はほぼ同じで、ケアリに一時的社会寄生を行います。
見分け方は、ヒゲナガアメイロケアリの女王アリの触角を見るのが一番分かりやすく、触覚柄節が偏平状で、多数の立毛を持つことからアメイロケアリと区別することができます。また、ヒゲナガアメイロケアリの方がアメイロケアリよりも漆黒に近い黒で艷があります。
アメイロケアリ・ヒゲナガアメイロケアリの飼育
それでは、アメイロケアリやヒゲナガアメイロケアリの飼育について私の経験をもとに流れを解説していきます。基本的には新女王からの飼育経験しかありませんので、解説についても新女王からのものになります。
※ヒゲナガアメイロケアリも全く同じ方法で寄生・飼育できるため、アメイロケアリ、ヒゲナガアメイロケアリの両種の写真でご説明していきます。
寄生先のケアリを飼育する
まず、一時的社会寄生をするためのコロニーを用意しておく必要があります。
種類はトビイロケアリやハヤシケアリなどです。私の場合はトビイロケアリに寄生させることが多いですね。
この際、トビイロケアリの女王アリがいる必要はありません。働きアリの数は多い方が良いですが、少なくても寄生させることはできます。
ケアリの繭を用意する
特に重要だなと感じたのは、繭の準備です。繭は飼育しているコロニーからでも、野外からの採集でも、どちらでもOK。
50以上、可能なら100単位で用意できるといいでしょう。立ち上げ時の繭(働きアリ)の数が多いほど大きくコロニーが成長するようです。
ちなみに私は20〜50ほどで開始しましたが、この程度だと大きなコロニーになりにくい印象でした。私みたいにコロニーを大きくしたくない(コンパクトに飼育したい)場合は少なめの働きアリで開始するのも一つの手ですね。
また、繭を用意する際、オスアリの繭と働きアリの繭を間違えないようにします。繭の大きさはどちらも似ていますが、オスアリの方が若干細長い?気がしますね。
新女王アリの採集
それでは、新女王アリを採集しましょう!
アメイロケアリやヒゲナガアメイロケアリの結婚飛行シーズンは東京で6月から7月が中心です。この時期以外では新女王の採集は難しいので、タイミングだけは忘れずにしておきたいですね。
私がアメイロケアリの仲間の女王アリを採集した事がある時間帯は、
- 夕方6時〜7時ごろ
- 深夜0時〜1時ごろ
- 朝7時〜8時ごろ
です。
つまり、夕方から深夜に飛び出して、朝方まで女王が徘徊していたのかもしれません。少なくとも、日中よりも夕方〜早朝の方が採集できる可能性が高いはずですよ。
女王アリの採集について詳しくはこちらも参考にしてみてください。
翅を落とした女王アリは、トビイロケアリの働きアリを口に咥えた状態で見つかる場合と、咥えていない状態で見つかる場合があります。
私が寄生する時は、何も咥えていない女王アリの方が成功しやすかったため、こちらを選んで寄生するようにしています。
働きアリとの合併
無事にアメイロケアリの女王アリを採集したら、なるべく早いうちに寄生を開始しましょう!これは感覚の話になるので参考程度になりますが、早いほうが寄生させやすい印象があります。
アクリルパイプやチューブを50〜100mmほどにカットし、片側に水で湿らせた綿を入れます。
そして、採集した女王アリと寄生先のケアリワーカーを1匹投入し、逆側にも蓋をして強制的に合わせます。
この時、上手くいくと女王アリはワーカーを口に咥える仕草をとります。その状態が確認できたら、一定時間放置させたのち、さらに1匹のワーカーを追加します。(※咥えなくても女王アリとワーカーが馴染む場合もあります)
ワーカーが女王アリに攻撃しないようなら、これを1匹ずつ更に繰り返し、10匹〜女王アリと馴染ませます。
どうしても女王アリとワーカーがケンカし合う場合、ワーカーを低温管理(1分〜2分ほど冷凍庫に入れ動きを止める)して女王と合流させる方法もあります。ただしこれは一歩間違えるとワーカーを死なせる可能性があるため、十分注意しましょう。
飼育ケースに移動
無事にアメイロケアリの女王アリとケアリのワーカーたちが馴染んだら、チューブから飼育ケースに移動します。
飼育ケースは加湿可能な巣を使用します。一般的な石膏巣でも良いでしょう。私はいつも平型石膏巣を使っていました。また、飼育ケースには、あらかじめ用意しておいた繭を投入しておきます。準備ができたら、チューブと飼育ケースを繋げます。
ある程度時間が経過すると、アリたちはチューブから飼育ケースに移動し、入れておいた繭の世話を始めます。ここまでくれば寄生はほぼ完了です!
また、エサ場を繋げてエサを与えるのも忘れず行いましょう。エサは幼虫が生まれるまでは蜜エサでOKです
産卵〜繭
私の飼育時は、アメイロケアリやヒゲナガアメイロケアリの女王アリ採集から20日ほどで産卵を確認しました。
この頃には立ち上げ時に入れた繭も全て羽化しており、トビイロケアリのワーカーたちがヒゲナガアメイロケアリが産んだ卵を世話する姿を見ることができます。
その後、真夏の時期に幼虫〜繭と成長していきます。
アメイロケアリの働きアリの誕生
過去2年間の飼育とも、9月の第一週に最初のアメイロケアリ(ヒゲナガアメイロケアリ)の働きアリが羽化しました。
新女王アリを採集してから2ヶ月ちょっとです。
最初の1匹が誕生すれば次々と羽化が続きます。私のように50匹程度のコロニーで始めた場合は10数から30匹程度のアメイロケアリの働きアリが誕生して冬を迎えます。
1年経過するとアメイロケアリだけのコロニーに
そして次の年の春になると、最初に投入したトビイロケアリの働きアリたちが徐々に減少します。
丸1年経過したタイミングでアメイロケアリのワーカーに残されたトビイロケアリが襲われるのです。
それこそ、まさにアメイロケアリの結婚飛行シーズン。そのタイミングにアメイロケアリの一時的社会寄生は終わり、完全なるアメイロケアリのコロニーが完成します。
アメイロケアリ飼育の注意点
アメイロケアリの飼育は一般的なアリに比べると難易度が高い種類です。しかし、何度か人工的に寄生するとコツがわかってきます。
しかし、100%確実に寄生が成功するかというと、そうではありません。
寄生先のケアリに女王が攻撃される可能性
一旦上手くいったように見えても、突然合流させたワーカーたちにアメイロケアリの女王アリが襲われて死んでしまうことがあります。
より入念に時間をかけて寄生させることで攻撃される可能性を減らすことはできますが、やはり確実とは言えないのが難しいところです。
女王アリが突然死することがある
また、産卵まで確認できていても油断はできません。ある日突然女王アリが死んでしまう事があるからです。
ケアリの仲間は、飼育していると女王アリが突然死ぬ事がありますが、アメイロケアリでも同様に起こります。
アメイロケアリのエサ
アメイロケアリのエサは通常のアリのエサと変わりません。下記エサを中心に与えましょう。
- 蜜エサ(メープルシロップ、はちみつなど)
- タンパク源(プロゼリー、ミルワーム、ローチなど)
アメイロケアリの飼育ケース
アメイロケアリは樹木近くの地中や木の根元に巣を作るため湿った環境を好みます。
ですから、石膏巣など加湿をできるアリ飼育ケースがベストです。ちなみに私は石膏巣を使っています!
温度などの飼育管理
日本の在来種ですから、特に加温などは必要ありません。
ただし、真夏は30度を超えないよう25度から28度を目安に管理すると良いでしょう。
まとめ
アメイロケアリ(ヒゲナガアメイロケアリ)の飼育方法について私のやり方をご紹介させていただきました。寄生させる必要があるためやや難易度の高いアリですが、しっかりと準備をしておけば意外と簡単に寄生させることができます。
働きアリは黄色く透き通るように美しいアリですので、アメイロケアリの寄生・飼育にぜひチャレンジしてみてくださいね!