アリの巣(蟻飼育容器)と聞いて真っ先に想像するのは、おそらく皆さん「石膏巣」ではないでしょうか。それ以外で思いついた方もおそらく「試験管巣」や「アクリル巣」でしょう。でも今回ご紹介するアリの木製飼育ケース「丸太巣」はそのどれにも当てはまりません。今までありそうで無かった新しいタイプの巣なのです!そして先日ついに私も丸太巣を入手できましたので徹底レビューさせていただきます!
目次
待望の木製アリの巣型飼育ケース
実は最近、アリ飼育に新たな方向性が示されつつあります。それが、樹上性のアリに最適な飼育についてです。最も日本で普及している石膏巣だと、樹上性のアリとの相性はとても悪く飼育に向きません。また、試験管巣やアクリル巣が今まで樹上性アリの飼育に最も貢献してきた流れもありますが、これらは自然な状態を観察できないという欠点がありました。そのような従来のアリ飼育ケースの欠点を完全に補うのが「丸太巣」という訳です。
丸太巣とは?
木製のアリ専用飼育ケースです。製造・販売は「あり巣 in underground」さんとなっており、完全オリジナル品のためこちらでしか手に入れることができません!
特徴は天然の木材が”丸太のまま”アリの巣になっているところです。既製品で木材をアリの巣形状にしたアクリルケースも存在しますが、こちらのこの丸太巣は樹木のままの形状ですから非常にリアルな飼育ケースとなっています。
丸太巣を開封!
では早速「丸太巣」を開封していきましょう!ネット販売となりますから、このようにダンボールに梱包されて届きます。箱を開ける瞬間はいつもワクワクしますよね!
内容物を見てみよう
では、丸太巣に入っているものをまずはご紹介します。
- 丸太巣本体
- 丸太巣を固定するケース
- ネジ・ワッシャー ×2
- 給水塔
- エサ場
- 抜け止めゴムリング ×2
- 底砂
丸太巣本体
丸太巣は防虫・防湿のために真空で袋詰されています。なんかすごくしっかりしてますね!!ちなみに、天然の丸太ですから事前の処理もしっかりされているみたいです。木材は反りや収縮のする材料なので乾燥が非常に大切。そのような処理もじっくりとされており、安心感があります。
丸太巣を固定するケース
正方形のアクリルケースです。天面が蓋になっており、2つの穴が開いています。この穴にネジを使い丸太巣本体を固定します。
ネジ・ワッシャー
2つ付いています!これで蓋と丸太巣本体を固定します。材質は樹脂で熱伝導率が低いものが採用されています。金属製のものだと熱伝導率の高さから温度差により結露が発生する恐れがありますので、樹脂製のネジなのは乾燥という点でも有利ですね。
給水塔
これはアリの給水用の道具です。石膏の巣と大きく異なるのが”水飲み場”の存在です。
エサ場
上面がメッシュで通気があるエサ場です。通風がしっかりしているので、外の環境に近い状態を維持できます。
底砂
後述しますが、丸太巣をケースに組むと丸太が宙に浮いた状態になります。この底砂をケース下面に敷いて高さを調整することで地面に生えた樹木のように見せることができます。
丸太巣を観察しよう
折角なので、ハンドメイドの丸太巣を観察してみましょう!
まずは上の面。ここにアリが巣を作ります。木材自体は徹底的に乾燥されており、気乾状態になっていると思われます。
実物を見ると、このハンドメイド感が最高にいい感じです!見た瞬間に、「これめっちゃ時間と労力がかかっているはず…」と思ってしまいました。まず、硬い木材であることと、菌糸が回っていないこと、乾燥されていること、規格に合う直径であること、などなど相当に大変と思われます。そして、加工がかなり細かいんです。一見、平面的に見えませんか?でも違うのです。一つ一つの部屋の深さが実は異なります。この立体感もアリの好みに合わせているのでしょう。
サイドにはあり巣「焼印」。これは最近オプションで焼印を付けられるようになったようです。とっても可愛らしい焼印なので入れたほうが個人的には引き締まって好みです。もちろん、従来どおり焼印無しでも注文は可能みたいですよ〜。
斜めからみると、アリの巣の部屋の立体感がわかりますね。私の丸太巣は中型以下〜小型種用でお願いしたので、入り口も小さく部屋の作りも細かくレイアウトされています。
丸太巣を組み立てよう
それでは、丸太巣を組み立てていきましょう!とは言っても、ほとんど完成状態で到着しますので、材料をくっつければ簡単に完成します!
ちなみに、組み立てるときに「プラスドライバー」が必要です。ちょっと太めのプラスドライバーがあればそれがおすすめです。
ネジ位置を確認する
蓋と丸太巣には2つのネジ穴が開いています。その片方にシールが張ってあるので、シールが張ってある穴同士を固定すればOKです。位置がわかったらシールは剥がしましょう。
蓋を合わせる
丸太巣に蓋を重ねます。ズレがなければこの状態で固定します。
ネジとワッシャーで固定する
付属のネジとワッシャーで蓋と丸太巣本体を固定します。このとき、ガチガチに締めてしまうとヒビが入ってしまったり、蓋が反って上手く閉まらなくなってしまうのでゆっくり確認しながら締めるようにしましょう!
固定されると、蓋に丸太巣がくっついた形状になります。
底砂を入れる
続いて、ケースの底に底砂を敷きます。今回は殺菌されて安全な同梱品を使用しましたが、自分好みの底材を使っても良いかもしれませんね!
丸太巣本体の完成
ケースに蓋付きの丸太巣をはめ込めば本体は完成です!ちなみに左下にはエサ場へつながる穴が設けられています。
巣からエサ場へは、一旦樹皮を通ってから底砂を経由し、エサ場につながる穴へ移動するよう設計されています。
樹木を歩くアリの様子がお部屋の中で見られるって訳ですね!
エサ場と水飲み場の準備
続いて、エサ場を用意します。エサ場はすでに完成していますが、上面と下面に保護シールが付いているので剥がしましょう。
給水塔は水を入れれば準備OK。
エサ場と給水塔をつなげます。
丸太巣をつなげる
最後に、丸太巣本体と、エサ場+給水塔を繋げます。給水塔にT字の継ぎ手が付いているので簡単です!
木製アリ飼育ケース「丸太巣」の完成
組み立て時間は15分くらいでしょうか。すごく簡単に作れます。難しいところは無かったですが、底砂を入れる量が多すぎると蓋が閉まらなくなるので、その調整については都度確認しながらやる必要があります。
丸太巣の管理方法は?
ここからは、丸太巣を使う上で絶対に知っておかなければならない注意点をご説明します。今まで石膏巣に慣れている方ほど間違った使い方をする可能性があるので、ぜひご確認ください。
加湿は厳禁
石膏巣では当たり前だった巣の加湿はNGです。樹上性のアリは枯れて乾燥した木材内や枝内に身を潜めています。ということは巣には湿度がほぼ要らないのです。また、木材の大敵は水分です。担子菌類や子嚢菌類による汚染は木材の劣化を引き起こします。ですから基本的に丸太巣本体は常に乾燥させましょう。
水分は給水塔で補給
巣は乾燥させますが、給水場所を設けてアリに水飲み場を提供させる必要があります。この丸太巣セットには給水塔が標準で付いていますから安心です。
丸太巣にアリを引っ越しさせる
巣が完成したらアリを引っ越しさせましょう!丸太巣を手に入れてから「何アリを導入しようかな〜?」と悩みに悩んだのですが、今回は「テラニシシリアゲアリ」を導入してみます。
丸太巣にオススメのアリっているの?
丸太巣と相性の良いアリは「樹上性」のアリです。その中でもおすすめのアリを少しだけご紹介します!
- ミカドオオアリ
- ヨツボシオオアリ
- イトウオオアリ
- ウメマツオオアリ
- ナワヨツボシオオアリ
- ヤマヨツボシオオアリ
- テラニシシリアゲアリ
- ムネボソアリ
乾燥した樹上性のアリの中で入手難易度の低いアリはこの辺りです。ミカドオオアリやウメマツオオアリは購入することもできますし、上記のアリなら簡単に採集することもできます。
あり巣 in undergroundさんのHPでは、ミカドオオアリやヨツボシオオアリで既に飼育実績があるとのことです。
テラニシシリアゲアリを準備する
ということで、テラニシシリアゲアリを丸太巣に導入するためにまずはテラニシシリアゲアリを手に入れるところから始めます………。いやいや持ってないのかい!って突っ込まれそうですが、ちゃんと我が家には既にコロニーがあるんです。でも、「既に巣に住み着いているコロニーを移動させるよりも、新コロニーのほうが良いのではないか…」と思ってしまい取りに行ってまいりました。
テラニシシリアゲアリは比較的どこにでもいる種類なので、生息場所を覚えておけばほぼ確実に採集可能です。しかも、細い枝に営巣していることが多いので落ちている枝の確認が楽なのです。(大型種だともっと太い枯れ枝にいることが多いので結構大変)
ということで今回も簡単に採集できたので、1コロニーだけお持ち帰りして丸太巣にお迎えしようと思います!
こちらが採集してきたテラニシシリアゲアリ。推定数百匹のコロニーです。このケースには接続穴を設けているため、チューブでエサ場につなげて丸太巣への引っ越しを実行します。
エサ場に繋げた状態。
仮容器→エサ場→丸太巣 という組み方です。丸太巣へは結構長い道のりですが、果たして何時間かかるでしょうか。
仮容器からエサ場まではものの数分で到達。あとは丸太巣本体に到達すれば引っ越し完了!
そして、丸一日・・・。無事引っ越してくれました!!
こんな感じで部分的に固まって巣を使っています。一部やんちゃなアリさんが木材をガシガシ噛んでいますが、天然の巣ならではって感じです。アリたちが住心地のいいように自由に使ってくれればいいですね!
女王アリはこの中に隠れています。ちゃんと女王の部屋として働きアリたちに守られている様子もしっかり確認できました。
このように巣内では密集するようです。実際、テラニシシリアゲアリのコロニーを採集すると枝の一部分に密集する様子が観察できます。この丸太巣でも同じように密集している様子が見られるのにはとても感激します。ほぼ自然な状態を観察できるってこんなに良いことなんですね〜。
使って分かった丸太巣の良さ
やはりアリの巣は使ってみないと本当の良さが分からないですね。この丸太巣も実物を見て、実際に使用することで良さがどんどん分かってきました。まだ使い始めですが、「良いな」と感じたのは、
- アリの居心地が良さそう
- 樹皮を歩くアリが確かにリアルでいい
- 上側から巣を覗くスタイルなので観察がしやすい
すごく大事なことだと思いますが、アリの目線で考えると巣が本物の樹木だというだけでも落ち着くはずです。何というか他の巣に比べて妙にアリの生活の一部をしっかり切り取れている感がありますね。また、意外と良いのが「上面観察型のアリの巣」であることです。アリの飼育ケースは「横から覗くタイプ」と「上から覗くタイプ」の2種類がありますが、観察のしやすさで言えば間違いなく「上からの観察」です。その点も隠れた良いポイントでした。
丸太巣を買うなら
ここまで木製の本格的なアリ飼育ケース「丸太巣」について徹底レビューしてきましたが、みなさんも興味を持たれたのではないでしょうか?丸太巣は完全ハンドメイド、下準備から加工まですべて手作りのアリ飼育セットです。写真だけではなかなか伝わらないかもしれませんが、非常に丁寧に時間をかけて作られたものになっています。
一般的な試験管巣やアクリル巣、石膏巣は安価で手を出しやすいですが、アリ本来の姿を見られるものかといえば、必ずしもそうではありません。木製の丸太巣は完全に手作りということもあり大量生産品に比べ導入費用はお高めです。
ですが、「居心地が良さそうなアリ」見てみたくないですか?自分の飼育している樹上性アリに、居心地のいい巣を使ってあげたくないですか?恐らくそれが実現できるのは、今の所「丸太巣」しかないと思います。ありそうで無かった木材のアリの巣。ついに市販化させて誰でも購入することができるようになっていますので、興味をお持ちの方はぜひ、丸太巣を作られている「あり巣 in underground」さんの詳細ページも合わせて御覧くださいね!
木製でこんなにいいアリ飼育ケース。これは本当におすすめです!
https://aliceinunder.theshop.jp/items/26195604