「ミカドオオアリってよく聞くけど、どんなアリなんだろう」
「飼育してみたいから、網羅的な情報を探している」
みなさんも、このような目的でミカドオオアリを調べているのではないでしょうか。実は、私も数年前にミカドオオアリの飼育情報などを結構探していました。それから年月がすぎ、ミカドオオアリの飼育にも慣れてきたので自分なりの情報をまとめさせていただきます!
この記事では、ミカドオオアリの飼育方法や採集方法、家屋への被害、女王アリについて、などを網羅的にまとめています。
目次
ミカドオオアリの特徴とは
ミカドオオアリ(Camponotus kiusiuensis)は関東では比較的普通に見かけることができるヤマアリ亜科オオアリ属ミカドオオアリ亜属の大型の蟻です。日本では北海道から九州にかけて分布します。体長は8~11mmほどで、体色は黒色~褐色をしています(脚は褐色)。
日本最大のクロオオアリやムネアカオオアリに比べると小さいですが、それでも11mmにもなるため、日本国内では大型のアリと言えそうですね。
私が観察したところ、主に枯れ枝や枯れ竹の空隙内に営巣している姿をよく見ます。巣内には十数頭ほどの小コロニーが見つかることもありますし、数百頭のコロニーが見つかる場合もあります。
また、サテライトを形成し周辺の枯れ枝に分散して営巣するため、一つの枝から女王アリが得られない場合がとても多いのも特徴です。
ミカドオオアリの女王
女王アリは体長が約15mmの大きさで、働きアリと同じく黒色から褐色をしています。黒色という点ではクロオオアリにも似ていますが、ミカドオオアリの方がややオレンジがかった黒色でより高貴な美しさがあります。
ミカドオオアリの働きアリ
働きアリも女王アリと同じ体色です。黒色ですが、やはり褐色が目立ちますね。
また、屋外でミカドオオアリを観察していると、上写真のような色の薄い個体が混じっていることがあります。これらの個体は羽化直後の薄い体色ではなく、薄く固定されて茶色い体色をしています。
このような薄い色の働きアリがいるコロニーには、同じように体色の薄い個体が沢山みつかることが多い印象です。非常にきれいで美しい個体ですね。
ミカドオオアリは夜行性
実はミカドオオアリは夜行性のアリです。ですから日中に観察をしようとしても、なかなかミカドオオアリの働きアリを見つけられません。
ただし、谷沿いや北斜面など日の当たらない暗い林内では、日中も活動していることがあります。明るい時間帯にミカドオオアリを観察する場合は、そういった薄暗い場所を当たってみましょう!
ミカドオオアリの飼育
私自身、ミカドオオアリの飼育は5年目ですが、アリの中では非常に簡単に飼育ができる種類だと感じています。これまで数コロニーの飼育を実践してみましたが、どれも死ぬことなくコロニーを発展させることができています。
ということで、ここからは私の飼育方法についてご紹介していきます!
飼育ケース
まず、大前提としてアリの飼育には専用の飼育ケースが必要です。ミカドオオアリにも同じことが言えるので、まずは飼育ケースを用意しましょう。
アリ飼育について詳しくは「アリ飼育マニュアル【初心者対応版】」を御覧ください。
ミカドオオアリにおすすめのアリ飼育ケース
ミカドオオアリは正直、どの飼育ケースでも大丈夫です。アントルームさんの有名な蟻マシーン2号ミニでも大丈夫ですし、普通の石膏巣でも、アクリル巣、木製巣でも問題ありません。あと、あり巣in undergroundさんの丸太巣はミカドオオアリに一番合っていると思います!
私は現在、
この3つを使っています。
ミカドオオアリ飼育成功のポイント
ミカドオオアリの飼育にはちょっとしたコツがあります。
それは、「巣を乾燥させる」「エサ場に通風を設ける」「水分を用意する」この3点です。
巣を乾燥させる
「巣を乾燥させる」というのは「巣を加湿しない」という事です。
ミカドオオアリは乾燥した枯れ枝や竹に営巣するため、飼育においても乾燥を心がけた方が上手くいきます。代表的な飼育種であるクロオオアリやクロヤマアリは、加湿された環境を好むため、ミカドオオアリでも同じ環境で飼育されがちでした。
ところが、ミカドオオアリの巣を加湿してしまうと、体調を崩して最悪コロニーを消滅させてしまう恐れすらあるのです。
エサ場に通風を設ける
乾燥を好むミカドオオアリなどの蟻は、巣に繋げるエサ場も乾燥を心がける必要があります。
何故かと言うと、エサ場には蜜エサや小昆虫などの「水分」を含むものを設置するからです。エサ場を密閉すると、エサ場が多湿になってしまいます。その状態をミカドオオアリは好みません。
そのため、蓋にメッシュの付いたエサ場を使用してエサ場が常時通風させた状態を作ります。
私も過去に、「密閉したエサ場」、「メッシュで大きく換気できるエサ場」、「1cmほどの通気孔があるエサ場」などをミカドオオアリに使用してみましたが、「メッシュで大きく換気できるエサ場」が最もミカドオオアリの活性が高まりました。
また、エサ場を通風させるのは、カビや匂い、ダニの増殖を防ぐのにも有効です。
水分は忘れずに
飼育環境は乾燥を心がけますが、水分が不要という訳ではありません。
少なくとも、エサ場には水飲み場を設けてあげることをオススメします。水飲み場はエサ皿で十分に代用できますので、エサ場には餌用と水飲み用の2個のエサ皿を用意しておくと良いですね。また、給水専用のパーツやアイテムもショップで購入することができるので、専用のものを使うのもオススメです。
ちなみに、私はエサ皿に水を溜めて常にミカドオオアリたちが水を飲める状態にしています。
ミカドオオアリの飼育レイアウト例
私が長く飼育しているコロニーはこのように飼育しています。
中〜大コロニーの巣
- メイン巣(HybridNest)
- エサ場
- サテライトブース1(平型石膏巣)
- サテライトブース2(発泡スチロール巣)
小コロニーの巣
- メイン巣(平型石膏巣)
- エサ場
ミカドオオアリの飼育管理
年間の温湿度管理は?
ミカドオオアリは在来種のため、基本的に室温管理(特に加温しない管理)で大丈夫です。事実、私のミカドオオアリは、10度から30度の範囲内で管理しています。
ただし、1日の温度変化が激しい環境は蟻にとって好ましくありません。
夏は冷房で28度をキープしたり、冬は暖房が無く10度くらいの環境に置いておくなど、なるべく一定の温度がキープできる環境で飼育しましょう!
ちなみに私の場合、夏は常時エアコンで28度に保ち、冬もエアコンで15度から20度の間で管理しています(なので完全には冬眠させてません)。
エサは?
他のアリと同じエサで問題ありません。蜜エサを非常に好むため、砂糖水やメープルシロップは常備しておきましょう。
幼虫が成長する時期(春〜秋)には、ミルワームやレッドローチなどの昆虫を与えます。
私のミカドオオアリは、コロニーも大きいためか好き嫌いなく何でも食べてくれます。そのため飼育が非常に楽に感じますね!
- プロゼリー
- 砂糖水
- メープルシロップ
- はちみつ
- ミルワーム
ミカドオオアリの採集はどうする?
新女王アリを採集するなら5月の夕方〜朝に結婚飛行後の女王アリを探すことになります。
コロニーの採集なら、枯れ枝などに営巣するコロニーを採集します。
ただし、コロニー採集は前述のとおりサテライトの可能性が高く、狙って採集することは簡単ではありません。
一応、私の経験だと、直径1~2cmの枯れ枝には新女王アリや初期コロニーが見つかることが多いです。直径5〜10cmくらいの枯れ枝に大きなコロニーやサテライトが見つかります。生息環境は、乾燥しがちな尾根や斜面に普通にみられますし、ジメジメした暗い森でも見つかります。私が普段観察する場所では意外とどこでも見られる種類ですね。
最近ではアリ販売店でも取り扱っていることが多いため、ミカドオオアリの採集が難しいと感じたら購入する方法も検討してみるのもありですね!
ミカドオオアリの家屋内営巣
実はミカドオオアリは家屋内に営巣される事例があります。
主な営巣箇所は、壁内の断熱材の隙間や床材と床断熱材の間などです。他にも、漏水などで腐朽菌が回った後に乾燥した柱などの例があります。
おそらく、新女王アリがたまたま通風孔などから家屋内に侵入し営巣したものと考えられるでしょう。
ミカドオオアリ自体には人や建物への加害習性は無いため恐れる必要はありませんが、万一自宅に営巣された場合は駆除などの対処が必要となります。
また、飼育しているミカドオオアリが脱走した場合も、部屋内に住み着かれる可能性があるため飼育時は注意が必要です。
まとめ
今回はミカドオオアリについて、私の経験をもとにまとめてみました!
ミカドオオアリは飼育するのも簡単で誰にでもオススメできる種類です。また、5年ほど飼育してみると、「飼育環境さえ気をつければ何ら注意する点が無いな」ということに気づきます。
これまでは、ミカドオオアリはやや飼育難易度が高い、なんてことも言われていたことがあるみたいですが、個人的にはかなり容易だと思ってます。それは、飼育容器の変化であったり、乾燥飼育の普及であったり、色々と要因はあるかと思います。
みなさんも、ミカドオオアリを飼育される際には、飼育環境には十分注意して、巣を加湿しすぎないように乾燥を心がけて飼育をしてみてくださいね!
ミカドオオアリ、観察してみるととってもきれいで美しいアリですよ♪