ツヤクシケアリの飼育|採集から飼育まで実践してみた

ツヤクシケアリというアリって聞かないですよね。それもそのはず、普段の生活では見ることのできないアリの一種だからです。
ですが今回、このツヤクシケアリを1シーズン飼育することができましたので、簡単にツヤクシケアリの飼育などについて解説してみようと思います!

ツヤクシケアリってどんなアリ?

ツヤクシケアリ
フタフシアリ亜科の中では割と大きなフォルムと、赤と黒のエレガントな美しさを持つ美麗なアリです。実は私の大好きなアリでもあります。動きはゆっくり穏やかで、まるで高原でのんびり生活しているかのような雰囲気すら感じさせられる本当に美しいアリだと思います。

そんなツヤクシケアリ、名前に「クシケアリ」の名がありますが、実はハラクシケアリなどのクシケアリ属ではありません。正式にはツヤクシケアリ属のアリで、日本にツヤクシケアリ一種類しか記載されていないツヤクシケアリ属のアリなのです。とっても貴重ですよね。

なので、このアリを見ようとしてもなかなか見ることができません。
果たしてどんな場所に生息しているのでしょう。

ツヤクシケアリは山に生息している

実はツヤクシケアリが生息する場所は山の中になります。

しかし、山の中でも生息場所が特徴的で、亜高山帯の荒れたエリアでよく見ることができ、それ以外の場所ではあまり目にすることができません。

ツヤクシケアリ
具体的には、林道の建設により一部が開けて明るく乾燥した状態になった法面や道路脇などです。それ以外でも火山砂礫地などの開けた場所にも生息すると言われています。

私がツヤクシケアリを観察する場所では、人の手が加わった撹乱地で普通に見ることができます。アスファルトの割れ目に巣を作る場面もよく見ますね。また、アカヤマアリがいる場所にはツヤクシケアリが生息している場合も多いです。

ツヤクシケアリの特徴

先ほどもご説明したとおり、ツヤクシケアリは赤と黒のコントラストが美しいアリです。
体長は働きアリで初期コロニーは5mm前後、成熟すると7mmほどになります。女王アリは10mmほどの大きさなので、似た種類(クシケアリ)と比較すると非常に大きいサイズです。

ツヤクシケアリ
働きアリの色は、胸部から腹柄節にかけてはピンクがかった赤色、頭部と腹部は黒色となり、女王アリの色は全体的に黒で腹柄節付近だけ赤褐色となります。体色の特徴はトゲアリに非常に似ていますね。

ツヤクシケアリとの出会い

私がツヤクシケアリを初めて見たのは登山中でした。とある山の登頂を終え下山中の砂礫地で見つけたのが最初です。そのときはツヤクシケアリの名前は知らなかったものの、日本産アリ類画像データベースからツヤクシケアリの名前を知り、一瞬で一目惚れしちゃいました。

それからずっと、「このアリ飼育してみたい!」という願望がずっとあったものの、なかなか採集までには至らずズルズルと年を重ねて行く日々が続いたのでした…。

ツヤクシケアリ女王アリの採集

ツヤクシケアリの女王アリ
初めて見つけた日から数年後の2020年、やっとツヤクシケアリを飼育するという夢が叶います。

とある林道沿いで石をひっくり返しながらアリ観察を行っていると、黒色で細長く見慣れないフォルムのアリが単体で隠れているのを偶然見つけたのです。

それがツヤクシケアリの新女王アリでした。

ツヤクシケアリの女王
ツヤクシケアリは毎年9月ごろに結婚飛行を行う秋飛行型のアリです。おそらく結婚飛行後に越冬し、これからの暖かい季節に活動するために石下に隠れていたのでしょう。

このとき、まだ産卵をしていない段階だったため女王アリ単体だけ採集し、また、念の為近くのツヤクシケアリの巣から蛹を少しだけ頂いて飼育チャレンジを開始しました。

ツヤクシケアリの新女王はどう採集する?

私は越冬後の6月下旬ごろに小さな石(直径15cmくらい)の下に巣をつくり始めた女王アリを採集しました。

しかし、最も可能性が高いのは結婚飛行のタイミングで採集する方法だと思います。ツヤクシケアリは9月ごろに結婚飛行を行います。そのタイミングで採集できれば、アスファルト上や側溝内を歩く女王アリを簡単に見つけられるはずです。

※生息地・採集地などについてのお問合せには一切ご返答いたしておりません。

ツヤクシケアリの飼育

自然状態では、結婚飛行後に石下や倒木下などで越冬し、来春から活動・産卵を開始すると思われます。そのため、飼育下でも産卵は翌春からとなります。
もしも、秋に新女王アリを採集した場合は、一定の低温状態で越冬させたのち、春頃から飼育を本格的にスタートしてみると良いかもしれませんね。(加温により産卵が早まるかもしれませんが、未経験のため不明です。)

飼育ケースを用意する

ツヤクシケアリは砂礫地などの土壌中に巣をつくるため、ある程度の湿度が必要です。そのため、通常飼育で使う石膏飼育ケースで問題なく飼育ができます。


今回は、あり巣in undergroundさんの天然石入り平型石膏巣を使用しました!

産卵

私が採集した場所は、6月ごろからアリたちが活動を開始し10月から11月には越冬を始める寒い地域です。1年のうち半分は越冬期間でもあるため、その活動がどのようなペースで行われるのかも不明でした。

ところが、採集から1週間ちょっとでツヤクシケアリの女王アリが産卵を始めます。


この日が7月10日ごろなので、平地のアリと比較すると非常に遅い産卵開始ですね。

また、これと前後して予め採集していた蛹5つも女王アリに与えてみました。結果的に、蛹たちはすぐに羽化し女王アリを本当の女王だと認識、以降女王の卵や幼虫の世話を担当することになります。

幼虫の誕生から働きアリの羽化

産卵からどれくらいで孵化したかを確認することができませんでしたが、卵や幼虫たちは比較的早く成長してくれます。

エサを食べる幼虫
好むエサは小昆虫で、肉団子にできるエサが特に好まれますね。働きアリたちはエサを巣内に運び入れ、幼虫にそのエサをそのまま食べさせることもあります。

ツヤクシケアリの蛹
しかし、羽化までには結構時間がかかりました。この女王の最初の働きアリは10月の初旬に羽化しました。

ツヤクシケアリの働きアリ
7月から4ヶ月…。普通はこんなにかからない気がしますが、今回の飼育1年目ではこのような結果となりました。今シーズン現時点(11月中旬)で5匹の小さな働きアリたちが誕生し、巣内外で活動しています。まだ蛹や卵、幼虫があるためまだ年内に羽化する個体が出てきそうな感じですね。

飼育環境のまとめ

現時点での飼育環境です。巣はあり巣in undergroundさんの天然石入り平型石膏巣をそのまま使い続けています。
石膏には水分を含ませて巣内を加湿させる加湿飼育とし、そこにエサ場をつなげています。

餌場
エサ場は蓋を開け閉めするタイプではなく、チューブを餌皿に改造してエサやり(エサ交換)をしています。初期コロニー場合は、この方法でも十分にエサ場管理が可能です。

エサ

蜜エサも食べますが、小昆虫を非常に好みます。
そのため我が家では、ミールワームを基本にシロアリやコバエ、クモなどを与えています。肉や魚も好んで食べる(特に幼虫が)ので、エサの種類が足りないときはこれで代用できます。その他、我が家の大定番のプロゼリーもほぼ必ず与えていますね。

まとめ

ツヤクシケアリ
ツヤクシケアリの飼育について簡単にまとめてみました。
私もまだ1シーズンしか飼育していない種類のアリですから分からない部分もたくさんあります。ただし、新女王アリからでも働きアリを誕生させることが特段に難しい種類では無いようです。

とはいえ、飼育よりも採集が難しいアリであるのも事実。飼育したくてもなかなか実現できないのがこのツヤクシケアリだと思いますので、もし偶然にも「新女王アリを見つけちゃった!」という場合には、この記事を参考にしていただければな、と思います。

また、来シーズンも飼育してみて、何か新しい発見や変化がありましたら、こちらに追記していきますね!

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