クロオオアリは日本で一番大きな蟻です。
そんなクロオオアリについて、特徴や生態から飼育方法や害虫としての考え方など、様々な視点から掘り下げてみました!最も身近で人気のあるクロオオアリについて、詳しく見ていきましょう!
目次
クロオオアリとは?
クロオオアリ(Camponotus japonicus)は、ヤマアリ亜科オオアリ属のアリです。
日本では非常によく見ることができる大型のアリで、日本最大のアリの一種でもあります。
- 大きさ(体長)
- 働きアリの体長は7mm〜12mm(7〜9mmの小型働きアリと、10〜12mmの大型働きアリ)、女王アリでは17,18mmと2cmに迫る大きさをしています。
- 体の色(体色)
- 全体的に黒色で、働きアリ、女王アリとも同様の体色をしています。
- 生息環境
- 公園や市街地、都市部でも普通にみることができる種類で、最も一般的なアリの一種です。比較的乾燥した土中に巣を作る土に依存するアリといえます。筆者の住む関東地方では、公園や畑、学校の校庭など開けて明るい場所でよく見られます。丘陵地や低山地でも明るい場所には普通に見ることができる最普通種のひとつです。
- 分布
- 日本では全国的に分布するアリです。奄美群島以南を除く、北海道、本州、四国、九州に生息します。
クロオオオアリには階級がある
大型働き蟻(メジャーワーカー)
12mmの働き蟻は大型の働きアリで、実際には10〜12mmほどの大きさです。大きいのはサイズだけではなく、頭部が大きく発達しており一際目立つ存在ですね。
見た目からしてもカッコいいアリです。この大型働き蟻は兵アリとも言われることがあり、大型の獲物を運んだり、護衛的な役割もこなします。別名メジャーワーカー。
小型働き蟻(マイナーワーカー)
そして、次に7mm〜9mmほどの大きさをした小型働き蟻が存在します。この働きアリがクロオオアリのコロニーを構成する主要の階級となります。これらの小型働き蟻が多数を占めるため、先にご紹介した大型働き蟻の大きさが際立っているんですね!別名マイナーワーカー。
女王アリ
クロオオアリの女王アリは、18mmと超大型です。一つのコロニーには必ず1匹の女王がおり、熟成したコロニーでは女王は巣の中心で働き蟻に守られながら産卵に専念します。
普段は外に出てくることがないので、女王アリを観察するのは働きアリに比べ非常に難しいです。女王アリは最初羽がついていますが、交尾後に羽を切り落とし、新しいコロニーを作り始めます。
▼女王アリをより細かく撮影しました!
オスアリ
雄アリは成熟したコロニーで1年の一定期間だけ出現します。
実は働き蟻は全てメスなのはご存知でしたか?メスだけでは生殖ができないため、新しい女王アリと交尾をするためのオスアリを作るんです。そして、オスアリも新女王アリ同様に羽がついています。
しかし、新女王アリや通常の働き蟻とは形態がやや異なります。頭部や腹部が小さく、胸部だけが飛行のために発達しているのです。まるで、結婚飛行をおこなう為だけに特化された形態をしています。
クロオオアリの生活は?
先程の雄アリの項目でも簡単に書きましたが、5月から6月に羽アリを飛ばします。特に雨上がりの晴れて蒸し暑く無風の日に、巣から多くの新女王アリと雄アリが飛び出して結婚飛行を行い、飛行中に交尾します。時間帯は午後で、夕方までには結婚飛行は終わります。
交尾を行った新女王アリは地面に降りると翅を自ら落として(切り落として)単独で土を掘って土中に潜り込みます。その後、密閉された小さな巣内で数個から10個程度の卵を産卵し、女王アリ自らがつきっきりで世話をします。
働き蟻は早いと1ヶ月後には羽化しますが、最初のアリは女王の体内の栄養だけで育て上げられるため、成熟コロニーの働き蟻と比較すると非常に小さく可愛らしい姿をしています。
その後は、10数匹から数十匹程度まで働きアリが増えて最初の冬を迎えます。2年目には数十〜百を超える立派なコロニーになりますが、数百〜千匹の成熟コロニーまで成長するには更に数年必要になるようです。
働きアリの寿命は1年ちょっとですが、女王アリの寿命は10年と言われています。(20年と言われることもあります)アリのコロニーの寿命は基本的に女王アリの寿命と一致します。ということは、クロオオアリのコロニーは10年、20年という長い年月をかけて生命をつないでいるのですね。
クロオオアリは害虫?
アリ専用の殺虫剤はホームセンターなどで沢山売られていますよね。でも、必ずしも「アリ=害虫」ではありません。クロオオアリは普段の人間の生活の中では害虫になることはほとんどありません。
ですから、クロオオアリは基本的に害虫では無いのです。
ただし、”キレイに管理している庭に巣穴を開けられてしまう”、”家に羽アリが飛来してくる”などの条件によっては害虫として扱われてしまうことがあるようです。もちろん、その様な場合は適宜、対策をすることは悪いことではありません。
ですが、クロオオアリには毒などは無く、有害な昆虫ではないのです。そのことからも、無闇な殺虫は出来る限りしないほうが良いといえます。
クロオオアリの飼育
実はアリの飼育で最も人気のあるアリのひとつがこのクロオオアリです。
おそらく、日本で飼育されているアリのトップシェアなのではないでしょうか?その人気の理由は、”大きい”ことや”丈夫”なこと、”飼育が容易”なことが大きいです。特にアリを初めて飼うような方にも安心してオススメできる飼育の容易さが魅力的です。
クロオオアリはどこで手に入れる?
自分で採集する方法とインターネットで購入する方法があります。自力採集の場合は、既存の巣を狙うのはNGです。なぜ駄目かというと、地中深くに作られたアリの巣の中にいる女王アリや働き蟻をピンポイントで採集するのは困難を極めるためです。採集は5〜6月の新女王アリの発生時期に巣穴を掘る前の女王アリを採集するのがベストです。
インターネットで購入する場合は、別記事にまとめました!
クロオオアリにオススメの飼育ケース
女王アリを入手することができたら、次は飼育ケースの選定です。
クロオオアリは土の中に営巣するアリです。そのため、ある程度の湿度が保てる飼育ケースを用意しましょう!
例えば、Antroomさんの「蟻マシーン」はクロオオアリの飼育で特に有名です。
地中の巣を再現しており、リアルなアリの生活を観察できる優れものです。これらの巣に外径8mm(内径6mm)のビニルチューブを接続して、別途餌場を付けて飼育をします。長期飼育をする場合は「巣」と「餌場」は必ず別々に分けるようにしてくださいね。
最初から大きなケースで飼育すると、コロニー規模によっては大きすぎる可能性があります。働きアリの数に対して巣が大きすぎると、掃除や管理が行き届かなくなり汚れの発生やカビ、ゴミの散らかしなど、不衛生になりがちです。
働きアリ数匹から10匹程度のコロニーの場合は、平型石膏巣など小さなケースで飼育を始めるのがオススメです。
また、100円ショップの材料で簡単な飼育ケースを自作することもできます!
餌は?
クロオオアリは蜜系の甘いエサを好みます。例えば、”砂糖水”、”メープルシロップ”、”はちみつ”、”ゼリー”などです。基本は甘い液体エサを与えます。
幼虫がいるコロニーは、それ以外にタンパク質をより多く必要とします。幼虫は成虫と異なり、蛹から成虫に変わる過程でタンパク源がとても重要な構成要素になるのです。タンパク質の例は、”ミルワーム”、”レッドローチ”などの生きた昆虫のエサが最も一般的です。それ以外では、”クワガタ用の高タンパク質ゼリー”や”乾燥赤虫”、”魚粉”、”肉製品”などがオススメですね。
その他のアリの飼育ポイントについてはこちらにまとめました!
まとめ
日本最大のアリであるクロオオアリについてまとめてみましたが、いかがでしたか?実は、私が初めて飼育を始めたアリはこのクロオオアリだったりします。もちろん、そのコロニーはまだまだ成長を続けていますよ。
とても一般的な蟻で、大きさ以外に特徴が無いですが、それでも大きな体こそが突出した特徴だと思います。見ていて楽しいですし、大食漢なのでエサを与えるだけでも結構楽しめたりします。
クロオオアリの飼育は本当にオススメ出来る種類です!まずは最初のアリ飼育として、クロオオアリを育ててみてはいかがでしょうか。
参考
・日本産アリ類画像データベース
・AntWiki
・AntWEB
・AntMaps
・日本産アリ類図鑑