アメイロオオアリを飼育して3年目となりました。
ここで、私なりにアメイロオオアリについて網羅的にまとめてみます。
アメイロオオアリに出会ったきっかけはこちらの記事で詳しく書いてますので、興味がありましたら読んでいただけると嬉しいです。
そこから完全新規のコロニーを立ち上げ、3年目となったのがこれまでの流れです。
目次
アメイロオオアリとは
まず、そもそもアメイロオオアリについてまとめてみます。
アメイロオオアリ(Camponotus devestivus)は、ヤマアリ亜科オオアリ属アメイロオオアリ亜属の蟻です。夜行性のため日中姿を見ることはほとんどありません。
体長は7mmから10mmほどで、クロオオアリやムネアカオオアリをひと回り小さくした大きさをしています。私が採集した女王アリは14mmほどの大きさでした。
和名・学名 | アメイロオオアリ/Camponotus devestivus |
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生息地 | 本州、四国、九州、伊豆諸島、大隅諸島、奄美諸島、沖縄諸島など |
体長 | 働きアリ:7~10mm、女王アリ:14mm前後 |
体色 | 頭部、腹部は褐色や黒褐色、胸部や腹柄節は黄褐色 |
営巣環境 | 立ち枯れの樹木、枯れ竹、枯れ枝など(比較的乾燥している) |
結婚飛行時期 | 9月ごろ(種子島にて7月に結婚飛行を確認) |
近似種にケブカアメイロオオアリ(奄美諸島以南)がいますが、頭部や前胸の立毛の有無で見分けることができます。
また、生息環境については、私が観察した地域(本州太平洋沿岸や大隅諸島)ではどこも海岸からほど近い照葉樹林内の朽木への営巣を確認しております。比較的乾燥しているため、乾燥を好む(もしくは乾燥に強い)と思われます。
照葉樹林内を歩くアメイロオオアリの働きアリ。自然光下でのアメイロオオアリはひときわ美しいですね。
アメイロオオアリの女王アリ
アメイロオオアリの女王アリ。こちらは灯火で採集した個体です。
飴色の名前のとおり、胸部の飴色が非常に美しいですね。
アメイロオオアリの働きアリ
細長い顔が特徴的なアメイロオオアリの働きアリ。
幼虫の世話をする働きアリ。
アメイロオオアリの働きアリは写真をほとんど撮影していないので、また改めて撮影したらこちらに追加していきますね!
アメイロオオアリの採集
アメイロオオアリの採集は、他のアリと比較して難しい場合が多いでしょう。
ただ、生息地さえ見つけられれば、採集は比較的容易です。
新女王アリの採集
アメイロオオアリの新女王アリの採集は、9月ごろ灯火で採集します。
走光性が非常に強く、生息地付近の外灯には夜間結婚飛行で集まるアメイロオオアリの新女王アリと雄アリの姿を見られるでしょう。
地面を見ると、女王アリが歩いているため、翅を落とした個体を採集すればOKです。
コロニー採集
アメイロオオアリの巣は枯れ竹や朽木、枯れ枝などです。
生息地の照葉樹林内の枯れ枝(直径5cmから15cmくらい)を割ると、内部に巣があります。
ただし、この方法はコロニーが必ず採集できるとは限りません。
まず、「確率が低い」ことが挙げられます。同じような枯れ枝内には、チクシトゲアリやウメマツオオアリ亜属、ミカドオオアリ、シリアゲアリの仲間などが入っているケースが非常に多いです。
次に、「サテライト」が大半である点です。運良くアメイロオオアリの巣を発見出来ても、サテライトである場合が多く、女王アリが発見できないケースがよくあります。
確実に採集する場合は、その地域の結婚飛行時期を把握した上で、新女王アリを採集するのが賢明でしょう。
アメイロオオアリの飼育方法
アメイロオオアリは温暖な地域に生息するアリです。寒さに比較的弱い種類のため、冬場の飼育を気をつける必要があります。
しかし、それ以外は注意する点は少なく、飼育は容易です。
室温 | エサ頻度 | エサ種類 | |
---|---|---|---|
春、秋 | 室温飼育(20度〜25度) | 2〜3日に1度 | 蜜・小昆虫 |
夏 | 25~30度。私の家では28度 | 1~2日に1度 | 蜜・小昆虫 |
冬 | 15~20度 | 3~7日に1度 | 蜜(2月以降小昆虫も) |
与えるエサの種類
エサは蜜エサと肉エサを満遍なく与えます。好き嫌いは少なく、アリのエサとして有名なものはほぼ食べる優秀さです。
私は現在、下記のエサを中心にローテーションでエサやりしています。
アメイロオオアリの飼育環境
3年目となる現在のアメイロオオアリの飼育環境です。
夜行性の強い種類のため、飼育ケースは常時遮光しています。日中でも働きアリが餌場に出てくることもありますが、ほとんどの場合は夜(暗い時間帯)に活動しています。
ケースの構成はこのような感じです。
- 自作平型石膏飼育ケース
飼育当初から使用している飼育ケースです。加湿部屋として使っており、女王アリや幼虫などのメイン巣として3年目に入ってもなお使われています。- あり巣in underground「天然木入り石膏ケース」
こちらも幼虫などを移動させて使う場面が見られる巣です。加湿部屋に加水したときや振動を与えてしまったときなどの避難場所として使われている様子。- S-Tillandsia 「Hybrid Nest 2 Side type ・ small」
こちらの巣は将来のコロニー拡大を想定して繋げた巣です。現時点ではまだ使われていません。この飼育ケースの良い点は、遮光カバーがオプションで付けられる点です。他の市販品に無い良い点ですよね。
アメイロオオアリの生息環境は先述のとおり、比較的乾燥した枯れ木などです。
そのため、乾燥した巣を好むと思われますが、私が飼育する限り必ずしもそうだとは言えなさそうです。
新女王アリ〜1年目は加湿した石膏巣でコロニーの創設に成功している点、2年目に加湿部屋と乾燥部屋を繋げて飼育したところ両方の部屋を交互に使い分けていた点などから、どちらの環境でも飼育できる可能性があると言えそうですね。
現在も乾燥部屋と加湿部屋両方を繋げて飼育している理由は、観察するその時々でメインで使われる巣がコロコロ変わっているからです。コハクオオアリのときもそうでしたが、アリたちが自分たちで移動できるようにしてあげることも場合によっては大切なのかも知れません。
いわゆるヨコヅナアリ飼育のような多湿環境には適していません。アメイロオオアリの巣の加湿部屋も、ちょっとだけ水を加水する程度が良好です。乾燥せず、多湿になりすぎず、といった環境ですね。
アメイロオオアリの飼育記録
新女王アリの採集から現在までを表でまとめます。現在は80ほどのワーカーが誕生し、安定したコロニーを築いています。
採集日 | 2019年7月22日に新女王アリ(有翅)を採集 |
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産卵 | 7月31日に産卵を確認 |
孵化〜羽化 | 採集から49日目(9月8日)に最初の働きアリが羽化 |
最初の冬 | 8匹が羽化し、冬を迎える。室温にて管理。 |
2年目(春〜夏) | 乾燥部屋、加湿部屋を分け、好みを探る。加湿、乾燥環境を使い分けている様子を観察。20〜70匹に増加。 |
2年目(秋〜冬) | 80匹ほどになる。このまま2年目は越冬開始。室温15度以上20度未満で管理。 |
2年目で100を超えることができませんでしたが、これが普通なのか、少ないのかは不明です。
他にアメイロオオアリをイチから飼育されている方からの情報、お待ちしてます!「YouTubeのコメント」、「Instagramのコメント」へお気軽にコメントいただけると嬉しいです!
アメイロオオアリを飼育してみた感想
アメイロオオアリはきれいな色を持つ美しいアリです。
アリが好きな人であれば、誰もが飼育してみたくなるアリの一つだと思います。
しかし、夜行性である点や生息地の少なさから、実際にアメイロオオアリを見たことがある人は少ないのではないでしょうか。
私は偶然アメイロオオアリを飼育することができましたが、飼育して感じるのは、飼育するアリとしても非常に魅力的な点です。
飼育が容易だし、比較的大きな種類であることから観察もしやすい。それでいて美しい色合いとフォルム、その全てに魅力が詰まっています。
とは言え、飼育しようとしてもなかなか飼育出来ないのがアメイロオオアリ…。
販売されることも滅多に無いですし、飼育情報も多くありません。日本全国でアメイロオオアリの飼育者は果たして何人ほどいるのかも不明です。
ただ、偶然にでもアメイロオオアリを見つけたのなら、「ぜひ飼育してみてほしいな」、と思います。
それくらいオススメしたいアリです。
引き続き、アメイロオオアリの飼育についてはこちらの記事や当ブログ内で更新していきます!
▼アメイロオオアリの動画も公開中です!